何が正解かは分からない。
【ストーリー】
わけありの過去を捨てて牧師になったミューラー(ローレンス・フィッシュバーン)と酒ばかり飲んでいるバーの店主サル(ブライアン・クランストン)の前に、音信が途絶えて約30年になる旧友のドク(スティーヴ・カレル)が姿を現す。ドクは、突然の再会に驚く彼らに、1年前に妻に先立たれ、2日前に息子が戦死したことを話し、息子の亡きがらを故郷に連れ帰る旅に同行してほしいと頼む。こうして三人は、ノーフォークからポーツマスへと旅立つが……。
【キャスト】
スティーヴ・カレル:ラリー・“ドク”・シェパード
ブライアン・クランストン:サル・ニーロン
ローレンス・フィッシュバーン:リチャード・ミューラー牧師
J・クィントン・ジョンソン:ワシントン
ユル・ヴァスケス
シシリー・タイソン
【スタッフ】
製作総指揮:ハリー・ギテス/トーマス・リー・ライト/カレン・ルース・ゲッチェル
原作:ダリル・ポニックサン
脚本:リチャード・リンクレイター/ダリル・ポニックサン
音楽:グレアム・レイノルズ
2017年 124分
<シネマトゥデイより>
この映画は30年後の同窓会の話ではない。
この邦題は何なんだ?
何でこうなった?
全然30年後の同窓会の話じゃないじゃないか!
主演がスティーヴ・カレルだからてっきりコメディかと思ってました。
PrimeVideoだとジャンルはコメディだし。
ただ、まあタイトルには騙されましたけど、良い映画です。
息子の死から始まり、過去の戦友と会い、心の清算をする。
余白の多い映画でした。
全てがはっきりと語られる訳ではなく、何が過去にあったのか、これからどうなるのか。
匂わすけど見せない。
それが心地よかったです。
ただ、この映画は戦争批判映画でもある。
ベトナム戦争やイラク戦争を直接的に批判しています。
この映画は日本人だと100%理解する事は出来ないとも思う。
30年後の同窓会は3人の会話が心地よい。
ある日、バーに1人の客が現れる。
店主のサル(ブライアン・クランストン)に、その客は自分を覚えているか?と尋ねる。
サルは思い出した。
彼はドク(スティーヴ・カレル)。ベトナム戦争で共に戦った人物だった。30年ぶりの再開。
ドクは2日前に息子が戦死し、その亡骸を故郷に連れ帰る旅に同行してほしいとサルに頼む。
サルは同意し車を出す。
立ち寄ってほしい所があるとドクに言われて立ち寄った場所は教会。
そこにいたのがミューラー牧師(ローレンス・フィッシュバーン)。
彼もベトナム戦争で共に戦った人物だ。
戦争で足を悪くしているミューラーは最初は嫌がるが、妻の後押しにより共に旅に出ることに。
基地に到着した3人はドクの息子と対面する。
だが、そこでドクの息子の親友で同じ戦地にいたワシントン(J・クィントン・ジョンソン)から死の真相を教えられる。
息子は銃撃戦で死んだ訳ではなく、ただ、買い出しに行ったお店で後ろから撃たれて死んだのだった。
それでも軍の関係者達は勲章を与え英雄扱いにし、軍の墓地に埋葬しようと言う。
それに不信感を抱いたドクは軍の墓地には埋葬しない。妻の墓の横に埋める。軍服も着せない。
という事で、軍から死体を引き取る。
3人とワシントンで故郷ポーツマスまで旅に出る。
故郷へ向かう途中、様々なトラブルがあったり、過去のベトナム戦争時代の清算に行ったりする。
故郷へたどり着き葬式の準備を始める。
息子の事や過去の自分達の事などを話し、結局は息子には軍服を着せる事に。
葬式が終わった後、息子からの遺書を渡されたドク。
そこには軍服を着せて母さんの横に埋葬してと書いてあったのだった。
ストーリーを読んだだけだと、この映画の良さは全く伝わらない。
ただのおじさん3人による思い出旅行になってしまう。
この映画には余白があると最初に書いた。
それは3人の過去だ。明らかに何をしたかは語られない。
ドクは2年間服役をした。2人のせいで。
そして自分達のせいで仲間の1人が苦しみながら死んだ事は間違いない。
派兵期間が延長されて、心が疲れ切っていた彼らの部隊はモルヒネでハイになっていたのだろう。
それでいざという時にモルヒネがなくなっていた。
それにより苦しみながら死んで行った仲間がいたのだ。
その事実をその死んだ兵士の母親に言いに行こうとする。過去の清算だ。
だが、その母親は息子は周りの兵士を助けて殺されたと軍に教えられていた。
その英雄としての息子を誇りに思っていたのだ。
そんな母親を前にして結局本当の事を言えなかった3人。
助けられたのは自分達ですと嘘までついてしまう。
これが何とも切ない描写であった。
ドクは自分の息子の真相を知り、このような行動を取っている。政府は信用出来ないと。
だが、それと同じ事を自分達がしていたのだ。
でも、それは相手の幸せを思っての行動。
どちらが正解でどちらが間違いと簡単に割り切れない問題がそこにはあった。
最後の葬式のシーン。
サルが言う。
「俺にはわからん どれだけ大統領が感謝して遺憾に思っているのか でも受け取れ お前の国の旗だ」
この言葉は響いた。
30年後の同窓会の良いところはこの3人
スティーヴ・カレル、ブライアン・クランストン、ローレンス・フィッシュバーンの3人がこの映画の見所だ。
正直ストーリーは特に楽しい訳ではなく、平坦だ。
でもこの3人がこの映画を特別にしている。
スティーヴ・カレルは基本的に喋らない。落ち込み、常に何かを考えている雰囲気だ。
そりゃ息子が死に、その真相も嘘だったとなれば明るくなれる訳が無い。
でも、時たま見せる笑顔。ジョーク。それが周りの2人を笑顔にさせる。
その気配りを忘れられない人柄がスティーヴ・カレルの抑えた演技にハマっていた。
コメディのイメージが強い俳優さんだけど、フォックスキャッチャーでもそうだったが、抑えた演技もめちゃめちゃ上手い!
ブライアン・クランストンは一番喋る。常に相手に突っかかる。でも根は優しい。
一番国と神を批判をしていたのは彼だ。
「信じられるか? 今やベトナムに遊びに行く時代だぜ 金を払って写真を撮ってる 5万2千人が最後にクソした場所で」
「歴史上 占領した相手に好かれたいのは米軍だけ」
それでも、一番軍の事を愛しているのも彼だ。
「俺が納得できた唯一のカルチャーは海兵隊だ」
最後の葬儀にミュラーと一緒に軍のタキシードを着る提案したのも彼だ。
ドクに一緒に住もうと提案してる所がぐっときます。
こんなに喋る彼は珍しい。
ローレンス・フィッシュバーンは神父です。過去の通称は”殴りやミュラー”
こんな怖い神父さん嫌だけど、常に神のご加護を信じている。
だが、たまにたがが外れて口が悪くなる事も。
彼のハイライトは一緒に同行する時に言うセリフだろう。
妻に同行してきなさいと言われるが、渋るミューラー。
なぜなら、
「あの連中は私の暗黒時代の使者だ」
これは笑いました。
常にサルに挑発まがいの言葉をかけられるが気にする素振りを見せず冷静に言い返す。
だが陰では”クソムカつく奴だ”と言ったりと。
意外と腹黒い神父です。
この3人が電車で喋るシーンは最高です。
ちょっとお酒が入ってたのもあり、ほぼ下ネタ。神父も下ネタ。
これは不愉快になる人いるだろうなーって会話が続きます。
僕は大好きでしたが。
『30年後の同窓会』のまとめ
いまいち盛り上がりに欠けるストーリー、そして重めなテーマ。
誰しもにはお勧めできない映画です。
つまらないって言う人がいるのも分かる。
特にリチャード・リンクレイター作品が好きな人ほど多いかもしれない。
戦争批判が静かに、でもふんだんに盛り込まれている。
最後、軍服を着せて埋葬するシーンは良かった。
国の事や軍の言うことは信じてないけど、息子の気持ちを考えたらその選択になったんだろうな。
遺言を葬儀の後に読むって所が良かったな。
それを周りで静かに見守る2人も良かったな。
ブライアン・クランストンが神に扮して電話した所、最高だったな。
この映画はこの3人がいたから最後まで見れたようなものだ。
PrimeVideoで配信中。
『30年後の同窓会』のスタッフとキャストの他の映画
監督:リチャード・リンクレイター:『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』/『ビフォア・サンセット 』/『エブリバディ・ウォンツ・サム!!世界はボクらの手の中に』
スティーヴ・カレル:『ラブ・アゲイン』/『ハンズ・オブ・ラブ 手のひらの自由』/『40歳の童貞男』/『デート&ナイト』/『エンド・オブ・ザ・ワールド』/『マネー・ショート 華麗なる大逆転』/『ゲットスマート』
ブライアン・クランストン:『潜入者』/『ドライブ』/『疑わしき戦い』
ローレンス・フィッシュバーン:『アントマン&ワスプ』
*本ページの情報は2018年11月時点のものです。
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