これは家族の物語。
【ストーリー】
英国の炭坑町で暮らす11歳のビリーは、ふとしたきっかけからクラシック・バレエに夢中になる。男がバレエだなんてみっともない、と炭坑ストで失業中のパパは猛反対。だがバレエ教室の先生だけは、ビリーのダンサーとしての素質を見抜き、応援する。やがてビリーの才能に気づいたパパは、名門ロイヤル・バレエ学校に入りたいという息子の願いをかなえるため、ある決意をする。
【キャスト】
ジェイミー・ベル:ビリー
ジュリー・ウォルターズ:ウィルキンソン先生
ゲイリー・ルイス:パパ
ジェイミー・ドレイヴン:トニー
【スタッフ】
監督:スティーヴン・ダルドリー
脚本:リー・ホール
2000年 110分
<角川映画より>
リトル・ダンサーは見とくべき。変な意地は捨てよう。
リトルダンサーといえば名作映画の一つとして挙げられる。
僕はこれまでタイミングが合わなくて見ていなかった。
ずっとマイリストには入っていたのに。
見終わった今素直に思うのは”見といてよかった”である。
変な意地というか癖というか捻くれた心は早く捨てたほうがいい。
というのは、名作と呼ばれる映画。その中でも感動するのがわかりきっている映画。これらを何故か避ける傾向にあるのだ。
例えば『グリーンマイル』『アイ・アム・サム』『ライフ・イズ・ビューティフル』『ニュー・シネマ・パラダイス』などなど。
もちろん見てる映画もあるけど。『ショーシャンクの空に』とか。
感動すると分かっていながら見るというのが苦手なのだ。押し付けられてるみたいで。
それでも見たら見たでしっかり楽しんでるし、感動してるので変な意地みたいなのがある人は早く捨てましょう。
名作と呼ばれる映画は名作と呼ばれる理由がある。
リトル・ダンサーだと、先生とママの手紙を読むシーンとか。
リトル・ダンサーは家族の物語。
見る前は子供がダンサーになる為に悪戦苦闘しながら成長する物語だと思っていた。
でも今は違う。この映画は家族の物語だ。
物語の終盤でビリーがパパに言う。「お父さんは炭鉱の事しか考えないの?」
この一言が最高だ。あんなに好きになれなかったパパを好きになる。
パパは炭鉱がある田舎街ダーラムを出た事がないのだ。首都であるロンドンにさえ行った事がない。
なぜなら炭鉱がないから。この時の純粋に答えてるパパの顔とビリーの呆れた顔。最高だ。
自分の街しか知らない人は人と違う事を嫌う。これはどこの国でも同じだろう。
そんなパパは男がバレエをやるなんて考えられない。
男は黙ってボクシング。そんな人なのだ。
そのパパの息子ジェイミー・ベル演じるビリーはボクシング教室に通っているのだが、その場所にバレエ教室が入ってくる。
これは皮肉だ。パパ達が行なっているストライキのせいでバレエ教室が移動してきたのだ。
そのバレエを見て心が動く。ここから物語は始まるのだ。
最初はパパにバレたら怒られると思いこそこそとバレエの練習をするのだが、そのうちバレる。
当然男がバレエなんてと怒られる。
そんなパパの気持ちが変わるのだ。
ビリーをロイヤル・バレエ学校に入学させる為に死んだ奥さんの形見である貴金属を質屋に入れてしまう程に。
それは夜の体育館でパパの前でダンスを踊るシーン。
ビリーの渾身のダンス。それを見てパパはビリーが本気だと気づく。あと才能にも。
ビリーは欝屈したものが溜まっていた。環境がひどいのだ。
パパと兄のトニーはストライキの為仕事に行かず荒れている。さらに収入もない。
おばあちゃんは徘徊癖がありビリーが面倒を見なきゃいけない。それを嫌がっている訳ではないけども。
そしてママは死んでいるのだ。恐らく病気で。
ビリーはママが好きだった。
11歳の子供にはかなりハードな環境だと思う。
それでもビリーはその感情を表に出して荒れたり塞ぎ込んだりはしない。
優しいのだ。周りの事をしっかり考えられるのだ。
友達がゲイと告白するシーンであったりダンスの先生の娘との会話であったり。
そんな心優しいビリーが感情を爆発させて踊る。
「踊ると何もかも忘れて全てが消えます 何もかも 自分を忘れて 体の中に炎が 宙を飛んでる気分になります 鳥のように 電気のように そう 電気のように」
『リトル・ダンサー』のまとめ
誰が見ても楽しめるしお勧めできる映画です。
ビリーの表情を見ているだけで楽しめる。ビリーはあまり言葉では自分の心情を話さない。
その分表情で訴えかけてきます。それが絶妙で。誰もがビリーのファンになる。
この映画で15歳で英国アカデミー賞主演男優賞を受賞したのも納得。
何でビリーはタップダンスがあんなに上手いのか?
とか少し疑問に思う所もあるけれど、そんな事は些細な事なので粗探しをするなと。
パパがストライキを止めてビリーの為に働きに出て、そこで一緒にストライキをしていたトニーに詰め寄られるシーン。
柵の上でパパとビリーが佇んでいるシーン。
その柵からパパがビリーに落とされた後のシーン。
絶対それを言っちゃいけない雰囲気でおばあちゃんが言う、「私はプロのダンサーになれた」
バスの見送りでそれまで何も良い所がなかった兄トニーとのシーン。
終盤に叩き込まれます。でも、これは感動の押し売りではなくあくまでも自然に。
なので甘いものたっぷりの胃もたれ感がなく、爽やかな気持ちになれる名作映画でした。
『リトル・ダンサー』のスタッフの他の作品
監督:スティーヴン・ダルドリー:ものすごくうるさくて、ありえないほど近い