『ONCE ダブリンの街角で』☆☆☆☆☆☆ ジョン・カーニーの原点。ネタバレ映画レビューブログ

once ダブリンの街角で ☆☆☆☆☆☆




once ダブリンの街角で

商業主義ではない。

【ストーリー】

ダブリンの街角で毎日のようにギターをかき鳴らす男(グレン・ハンサードは、ある日、チェコ移民の女(マルケタ・イルグロヴァ)と出会う。ひょんなことから彼女にピアノの才能があることを知った男は、自分が書いた曲を彼女と一緒に演奏してみることに。すると、そのセッションは想像以上の素晴らしいものとなり……。

【キャスト】

グレン・ハンサード:男

マルケタ・イルグロヴァ:女

ヒュー・ウォルシュ:ティミー ドラマー

ゲリー・ヘンドリック:リード ギタリスト

アラスター・フォーリー:ベーシスト

ゲオフ・ミノゲ:エイモン

ビル・ホドネット:男の父親

ダヌシュ・クトレストヴァ:女の母親

ダレン・ヒーリー:ヘロイン中毒者

マル・ワイト:ビル

マルチェラ・プランケット:昔の彼女

ニーアル・クリアリー:ボブ

【スタッフ】

監督:ジョン・カーニー

製作総指揮:デヴィッド・コリンズ

脚本:ジョン・カーニー

2007年 87分

<シネマトゥデイより>

ONCE ダブリンの街角ではジョン・カーニーの原点。

once ダブリンの街角で

以前紹介した『はじまりのうた』の監督ジョン・カーニーの原点の映画だと思います。

この映画を作る前に『November Afternoon』/『Park』/On the Edge』

この3本を撮っていますが、これらは全て日本未公開でした。

っで、初めて日本で公開されたのが『ONCE ダブリンの街角で』

ジョン・カーニーの故郷ダブリンが舞台。

当時、劇場で見た時に、良い映画だな〜ダブリンて所がいいよな〜歌がいいな〜と思ってました。

アホみたいな感想ですみません。

そこから、『はじまりのうた』『シングストリート 未来へのうた』を観て、本日改めてこの作品を鑑賞。

 

変わらず、でも変わってく。

 

この言葉が一番しっくりきました。

 

この映画は他のジョン・カーニー作品と比べると圧倒的に地味です。

キャストも本物のアーティストを起用しているので、俳優としてのキャリアは無いに等しい。

映画的な分かりやすく盛り上がる部分も少なく、印象付けるセリフもほぼ無い。

男女の出会いから別れを描いたストーリーだけど、そこを楽しむには弱い。

 

一方、『はじまりのうた』『シングストリート』は派手。

演奏のシーンも派手。

見所も沢山あり、ここが山場ですよってシーンも分かりやすい。

セリフもリアルじゃなくなるが、映画的には必要な良いセリフが多い。

シングストリートのキャストは無名だけど、キャラが立っている。

男女の距離感も丁寧に描かれている。

 

簡単に言うと、商業的になった。

インディーズバンドがメジャーに行った感覚だ。

これは悲しい部分もあるけど、決して否定しているわけでは無い。

 

僕は最近のジョン・カーニー作品の方が好きだ。

やはり映画としては彼のような音楽映画はエンタメに振ってくれる方が面白い。

 

ただ、変わって無い所は”曲”を大事にしている所だろう。

特にこの映画では他の映画以上にセリフの代わりに曲で伝えてくる。

 

映像は荒く、洗練されてる映画ではないけど、グッとくる映画という点も変わってない。

ONCE ダブリンの街角でのストーリー(ネタバレ)

once ダブリンの街角で

ダブリンの路上でライブをしている男がいる。(グレン・ハンサード)

彼は掃除機修理の仕事をしつつ、路上ライブでも稼いでるのだった。

その男の前に、あるチェコ移民の女(マルケタ・イルグロヴァ)が現れる。

彼女はその男の歌に足を止め曲を褒める。

そのまま男の事を色々と聞く中で、彼が掃除機修理の仕事をしている事を知る。

彼女はちょうど掃除機が壊れていた為、明日持ってくると言う。

翌日、彼女は掃除機を持って男の前に現れる。

2人は修理をする為に、店に行く道すがら、彼女がよく行く楽器店に立ち寄る。

彼女はピアノが得意で、その店でよく弾いていたのだ。

男は彼女に自分の曲を教え、セッションをするのだった。

男は掃除機修理を終えて、帰ろうとする女に泊まっていけばと提案する。

女はそんな気は一切なく、少し気まずい雰囲気になり、帰るのだった。

翌日、男は女に謝り仲直りをする。

その後、彼女の家に寄ると、彼女の母親と娘が部屋にいた。

彼女は結婚しているが、旦那とは別居中だったのだ。

男も前の彼女に振られた事を曲にして歌っていた。

女はその彼女を取り戻すように応援する。

ある日、男はロンドンへ行って音楽で勝負する決意をする。

そこで、彼女にレコーディングの協力を依頼する。

彼女以外にも路上でミュージシャンをスカウトし、レコーディングを始める。

レコーディングは順調に行き、納得のいく出来になった。

途中、休憩時間に女が弾き語りした曲がある。

それは前の旦那との事を歌った曲で、途中泣いてしまう。

それを男は慰めるのだった。

アルバムが完成し、それぞれが家に帰る中、女は別居してる旦那が帰ってくると話す。

もう旦那と一度頑張ってみると。

男はダブリンで過ごす最後の日を女と過ごしたいと伝え、家に誘う。

だが、女は断り、一回家に帰ってから向かうと言う。

だが、女が男を訪ねることはなかった。

男はロンドンに向かう日、女と初めてセッションした楽器店に行き、ピアノを女に贈る。

その後、ロンドンに住む元彼女に電話をすると、元彼女は男が来る事を喜んでいた。

女は届いたピアノに驚きつつも部屋に搬入。

その部屋には旦那が帰ってきていた。

ONCE ダブリンの街角での2人の距離感。

once ダブリンの街角で

この映画を見てハッピーエンドじゃないってコメントを見た時にビックリした。

2人がくっつく事がハッピーエンドじゃないだろ。

2人とも元彼女、別居中の旦那に未練がある。

それを曲にするぐらい。

どうでもいい相手だったら曲なんかにしないでしょ?

その曲を聴いて女は男の背中を押すし、男も女の曲を聴いて旦那への想いを知るし。

お互いに惹かれてはいた。

2人がバイクで海を見に行くシーンだ。

男が「彼を愛している?」と聞く。

女はチェコ語で「私が愛しているのはあなたよ」と答える。

このシーンで女の言葉には字幕が入らない。

見終わってから調べて知った事実だ。

男はチェコ語を理解していないので、この言葉が分からなかった。

女に説明を求めても女は話さなかった。

もし、この時に男がこの言葉を理解していたり、女から説明があったら2人がくっつくのがハッピーエンドだと思う。

でも、女はそうしなかった。

観てる側にもそうしなかった。

そういう事なのだ。

軽く付き合うような関係じゃないのだ。

男はロンドンに行って成功を夢見ている。

女には母と娘がいて、娘の幸せを考えている。

2人の幸せは一緒にいる事ではないのだ。

だから、これはこれでハッピーエンドだと思う。

 

ちなみに『ラ・ラ・ランド/LA LA LAND』もハッピーエンドだと僕は思ってます。

87分の半分は歌ってる。

once ダブリンの街角で

この映画はセリフが少ない。

じゃあどうやって心情を吐露しているかと言うと、歌うのだ。

この映画はミュージカルではないのに、半分は歌っていると思う。

しかも一曲がフルで歌われる。

Aメロ→Bメロ→サビ→Aメロ…

こんな感じでほとんどの曲がしっかり最初から最後まで歌われる。

普通はワンフレーズとかじゃないですか。

後はバックで曲を流して、映像は進んでいくじゃないですか。

でも、この映画は違う。

心情や過去の出来事、前の彼女の事など。

これらがしっかり歌われる。

だけど、女が涙を流して歌えなくなるシーンがある。

それは別居中の旦那の事を歌うシーン。

このシーンはグッときてしまった。

 

この映画の曲は、間違いなく全部良い曲です。

ただ、文字だと伝えられない。

なぜなら曲だから。

詞の部分だけ抜粋しても半分も伝わらない。

だから、、、見てください。

ジョン・カーニーのこだわりが見えるので。

レコーディングのシーンも一曲まるまる録音風景が流されます。

そんな映画他にないでしょ?

『ONCE ダブリンの街角で』のまとめ

once ダブリンの街角で

アーティストのドキュメンタリーを見ているような映画です。

曲作りを丁寧に描いてますし、キャストの2人は本物のミュージシャンですし。

他のジョン・カーニー作品に比べると圧倒的にエンタメ性が少ないです。

先に他の作品を見て、彼の事が好きになった人は物足りなく感じるでしょう。

それでも楽しめるのは曲の良さと、ダヴリンの街並み(掃除機を引っ張りながら歩く女がよく似合う)

何よりジョン・カーニーの原点が見れるのが、ファンとしては堪らない作品です。

U-NEXT/PrimeVideoで配信中。 


*本ページの情報は2019年1月時点のものです。
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