
サスペンスと言うよりもよりもドラマ!
【ストーリー】
1969年、自らを“ゾディアック”と名乗る男による殺人が頻発し、ゾディアックは事件の詳細を書いた手紙を新聞社に送りつけてくる。手紙を受け取ったサンフランシスコ・クロニクル紙の記者ポール(ロバート・ダウニーJr)、同僚の風刺漫画家ロバート(ジェイク・ギレンホール)は事件に並々ならぬ関心を寄せるが……。
【キャスト】
ジェイク・ギレンホール:ロバート・グレイスミス
マーク・ラファロ:デイブ・トースキー刑事
ロバート・ダウニー・Jr:ポール・エイブリー
アンソニー・エドワーズ:ウィリアム・アームストロング刑事
ブライアン・コックス:ベルビン・ベリー
イライアス・コティーズ:ジャック・マラナックス巡査部長
クロエ・セヴィニー:メラニー
ドナル・ローグ:ケン・ナーロウ
ジョン・キャロル・リンチ:アーサー・リー・アレン
ダーモット・マローニー:マーティ・リー
リッチモンド・アークエット
ボブ・スティーヴンソン
ジョン・テリー
ジョン・ゲッツ
キャンディ・クラーク
フィリップ・ベイカー・ホール
【スタッフ】
監督:デヴィッド・フィンチャー
製作総指揮:ルイス・フィリップス
原作:ロバート・グレイスミス
脚本:ジェームズ・ヴァンダービルト
音楽:デヴィッド・シャイア
2007年 158分
<シネマトゥデイより>
ゾディアックはサスペンスと言うよりドラマ。

実際に起きたゾディアック事件を題材にしたこの映画。
ちなみに事件は未解決です。
158分と長尺で雰囲気も終始重い。
見た後に非常に疲れる映画だ。
冒頭で凄惨な殺人事件が起こり、それを追う記者や警察が描かれる。
これだけ見るとサスペンス映画なのかと思うが、実はそうではない。
ゾディアック事件に関わった人物を丁寧に描く。
全員の人生が事件に関わった事により大きく変わるのだ。
共通していたのは事件にのめり込んでしまう所。
自身の生活を顧みず、危険を犯してでものめり込む。
何でそこまで、、と思うのが普通だが、キャストの演技に引き込まれる為違和感がない。
ゾディアックの長さが気にならないのはその為だろう。
だから見た後は疲れる。
物語に入り込んでいるから。
もちろんサスペンス要素もありますが、未解決事件なのでスッキリしません。
謎解きを楽しむって感じも少ない。
事件を丁寧に描きつつ、人間ドラマに焦点を当てた重厚な映画です。
ゾディアックの簡単なストーリー(ネタバレ)

1969年7月4日、あるカップルが襲われ女性は命を落とす。
この事件が起きた後、新聞社に犯行声明文が届く。
そこには犯人しか知り得ない情報が書かれていた。
その事件を追う事になったクロニクル紙の記者エイブリー。
さらにクロニクル社で風刺マンガを担当しているグレイ・スミスも事件に興味を持つ。
その後、湖で事件が発生。
またもカップルが襲われ女性はナイフで刺され死亡する。
2週間後、タクシー運転手が射殺される事件が起きる。
その後、またも犯人から手紙が届く。
そこには犯行声明文とゾディアックよりと書かれていた。
事件が町中に広がるにつれ情報は錯綜する。
模倣犯が現れ事件を起こしたり、情報提供者が溢れ収集がつかなくなってくる。
そんな中、ある情報から1人の容疑者が浮かび上がる。
名前はリー・アレン。
元ルームメイトの証言によると
「ゾディアックの名前で警察をからかう」
などの発言や、過去に犯行現場の湖に行っていた事が分かる。
リーに会いに行く警察達。
だが、リーは犯罪を否定する。
しかし、腕にはめられていた時計の文字盤にはゾディアックと刻まれていた。
その後もリーの捜査を続け、彼の住むトレーラーハウスを調べる。
そこには様々な拳銃や事件の時に着ていたであろう衣類が見つかる。
だが、指紋や銃痕を調べてもリーはシロだった。
最前線で捜査をしていたトースキー刑事達は落胆する。
4年後。
記者のエイブリーはクロニクル社を去り、酒に溺れゾディアック事件から足を洗っていた。
トースキー刑事と一緒に捜査をしていた相棒も犯罪課から異動願いを出し捜査から外れる。
だが、グレイスミスだけが取り憑かれたように事件を追っていた。
彼はトースキーなどの警察から正式な捜査協力は得ていないものの、幾つかのアドバイスをもらい、独自に捜査を続ける。
そこである情報に行き着き、やはり犯人はリーだと行き着く。
その事をトースキーに伝え、犯人はリーだと確信した2人。
さらにタクシー運転手殺しの際、犯人を見た警察官に幾つかの写真を見せる。
その警察官はリー・アレンの写真を指差すのだった。
この証言を得た検察は殺人容疑でリー・アレンの起訴を検討するも、準備中にアレンが心臓発作で死亡。
2002年に行われたDNA鑑定も不一致。
しかし鑑定後もアレンを容疑者から除外せず。
サンフランシスコ市警は2004年に捜査打ち切り。
ナパ・ソラノ・バレーホでは現在も捜査中。アレンが唯一の容疑者である。
ゾディアックは未解決!なので全然スッキリしない!

最初に書いたようにこの事件は未解決だ。
だからしょうがないけど気分はスッキリしない。
犯行声明やテレビの出演。事件を追う人物に対しての電話。様々な場所に残された指紋や証言。
これらの要素が揃っていても捕まえられないのだ。
ほぼほぼクロだと分かっているのに捕まえられないのは見ていて歯がゆい。
でも、そりゃ逮捕出来ないよと頭では分かっている。
何故なら筆跡鑑定やDNA、指紋を調べても容疑者と一致しないのだから。
でも、描き方がどう見てもリーが犯人だと思わせる。
グレイスミスの今後を見たかった。
映画の最後に良き父親として、、、みたいな文字が流れるだけ。
彼がこの事件をどう思ってるのかが非常に気になる。
仕事を辞め、ゾディアックの犯人をリーだと確信し、でも捕まえられない。
事件について書いた本はベストセラーとなる。
多分、ベストセラーになった事は嬉しくも何ともないんだろうな。
ただ犯人を捕まえたかった。それだけだったんだろうな。
人間ドラマに焦点を当てていたからこそ、そこも描いてほしかった。
もっと長くなってしまうけど、、、
ちなみに、現実では奥さんと離婚しています。
ゾディアックに関わって人生が狂わされる人物達。

主な登場人物は3人。
彼らはゾディアック事件に関わり、のめり込み、不幸になった。
新聞記者のエイブリー:ロバート・ダウニー・Jr
彼はクロニクル社の敏腕記者だった。
模倣犯がたくさん現れ情報が錯綜する中、1人冷静にゾディアックの事を考え記事を書いていた。
記事の中にゾディアックをホモ呼ばわりして書いた事がある。
カップルを襲っても男性が助かっていたからだ。
そんなエイブリーの元にゾディアックから手紙が届く。
「そんなに正体が知りたいなら教えてやる そうはいくか ハッピーハロウィン」
この手紙と一緒に送られてきたのは被害者の血のついた服だった。
エイブリーは自身が殺人予告を受けたというコラムを書き挑発をする。
彼は独自のコネで警察よりも早く事件の情報をスッパ抜く。
エイブリーは命を狙われている事に内心焦っていたのだ。
それから時間が経ち、落ちぶれていくエイブリー。
酒とドラッグに溺れていく。
地方の新聞社に移り、ゾディアックとも距離を置く。
そしてそのままフェードアウト。
2000年に肺気腫で死亡。
敏腕記者がゾディアックに取り憑かれた。
挑発し、脅しを受け、精神を病み、酒とドラッグに溺れる。
グレイスミス以外誰も彼を訪ねなかったのが晩年の孤独を表していた。
風刺漫画家グレイスミス:ジェイク・ギレンホール
ただの風刺漫画家が、持ち前の好奇心と元ボーイスカウトの経験で様々な謎を解く。
そして最後まで諦めなかったのが彼だ。
家族を犠牲にしてまでも。
彼は自身のコラムでゾディアックについて言及する。
心配する妻だが、コラムなんて読まないと高を括る。
だがそこで鳴り響く電話。
ゾディアックから電話がかかってきたのだ。
そんな状況でも捜査を続けるグレイスミス。
妻は呆れ実家に帰る。
グレイスミスは慌てるが、妻は彼のことを見放したわけではなかった。
仕事を辞めゾディアックに専念した彼は、最後に犯人だと確信したリー・アレンに会いにいく。
そこで初めてリー・アレンを見たグレイスミスの表情は無だった。
彼はゾディアックについての本を出版。
ベストセラーになる。
刑事トースキー:マーク・ラファロ
ゾディアックに関わったせいで精根尽きた刑事。
証拠となりそうな手がかりが色々見つかるのに捕まえられないもどかしさ。
刑事という立場上、情報提供が出来ないもどかしさ。
一緒に捜査をしていた相棒は異動願いを出して捜査を降りる。
県知事候補からも捜査がだらしないと言われる始末。
「分からないんです 確信していたのか 早く終わらせたかっただけなのか」
トースキー刑事のこの言葉が印象的だった。
彼は1989年に警察を退職した。
話にのめり込ませるキャスト達。
ジェイク・ギレンホール/ロバート・ダウニー・Jr/マーク・ラファロ
この3人がこの長く重厚な映画に深みを持たせます。
熱演ではなくあくまでも自然に。
でも、事件に取り憑かれている様は若干恐怖を感じさせる。
この映画はゾディアックを捕まえる過程を見せたい訳ではない。
まあ捕まらないし。
ゾディアックに取り憑かれた人間を描いたドラマだ。
そこにリアリティを持たせたこの3人は素晴らしかった。
『ゾディアック』のまとめ

決して楽しい話ではありません。
犯人が捕まらないサスペンスはやはり後味が悪い。
『幸せの行方…』でも感じたけど。
観客は犯人はどう考えてもこいつだ!ってなっている。
でも、捕まえることが出来ない無力感。
実話だから中身を変える訳にもいかないし。
ただ、人間ドラマという点では良作だと思う。
事件に取り憑かれた3人の演技は素晴らしいし、最後の終わり方も秀逸だと思う。
『セブン』とはまた違った後味の悪さを楽しめる映画です。
U-NEXT/Netflixで配信中。
『ゾディアック』のスタッフとキャストの他の映画。
監督:デヴィッド・フィンチャー:『ファイト・クラブ』/『パニック・ルーム』
ジェイク・ギレンホール:『サウスポー』/『ラブ&ドラッグ』/『ナイトクローラー』/『ベルベット・バズソー 血塗られたギャラリー』/『ノクターナル・アニマルズ』/『エンド・オブ・ウォッチ』
マーク・ラファロ:『コラテラル』/『キッズ・オールライト』/『ブラインドネス』/『それでも、やっぱりパパが好き』/『グランド・イリュージョン』/『グランド・イリュージョン2 見破られたトリック』
*本ページの情報は2018年12月時点のものです。
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