斬新な復讐。
【ストーリー】
アートギャラリーの経営者スーザン(エイミー・アダムス)は、夫ハットン(アーミー・ハマー)と裕福な生活をしていたが、心は空っぽだった。ある日彼女のもとに、20年前に離婚した元夫エドワード(ジェイク・ギレンホール)から、彼が書いた「夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)」という小説が届く。
【キャスト】
エイミー・アダムス:スーザン・モロー
ジェイク・ギレンホール:トニー・ヘイスティングス/エドワード・シェフィールド
マイケル・シャノン:ボビー・アンディーズ
アーロン・テイラー=ジョンソン:レイ・マーカス
アイラ・フィッシャー:ローラ・ヘイスティングス
エリー・バンバー:インディア・ヘイスティングス
カール・グルスマン:ルー
アーミー・ハマー:ハットン・モロー
ローラ・リニー:アン・サットン
アンドレア・ライズブロー:アレシア
マイケル・シーン:カルロス
ゾウイ・アシュトン
インディア・メニューズ
グレアム・ベッケル
ニール・ジャクソン
ジェナ・マローン
クリスティン・バウアー・ヴァン・ストラテン
【スタッフ】
監督:トム・フォード
原作:オースティン・ライト
脚本:トム・フォード
音楽:アベル・コジェニオウスキ
2016年 115分
<シネマトゥデイより>
ノクターナル・アニマルズは美しい復讐劇。
こんな復讐劇は見たことない。
静かに内面を抉り、傷を残し続ける。
ノクターナル・アニマルズは、そんなエンディングが素晴らしかった。
過去に裏切られた相手を痛めつけたり、陥れたりという復讐物は腐るほどある。
痛快だし、溜飲が下がって気持ち良い作品だ。
他人の不幸は蜜の味とはよく言ったもんだ。
ただ、ノクターナル・アニマルズはそんな映画ではない。
復讐した本人は出てこないのだ。
復讐する相手にノクターナル・アニマルズ(夜の獣たち)というタイトルの本を贈っただけ。
自分はノクターナル・アニマルズの登場人物としては出てくる。
だが、ノクターナル・アニマルズの中身はフィクションだ。
残酷で、悲しくて、復讐を遂げ、後悔を滲ませる本。
復讐される側は、ノクターナル・アニマルズを読んで、様々な感情を呼び起こさせる。
この映画は見てもスッキリはしない。
痛快ではない。
見てる側も何か重い物を落とされた気分になる。
なのに嫌な気持ちではない。
なんなら爽やかだ。
トム・フォードはとんでもない映画を作ったもんだ。
しかも脚本も手掛けてるなんて。
天才デザイナーなのは言うまでもないけど、映画だけを撮っていたら名匠と呼ばれていたに違いない。
ただ、デザイナーとしての経験が、映画に存分に盛り込まれてるから、、、
映画だけ撮ってたら、こんなにも綺麗で美しすぎて、ゾッとする映像は撮れなかっただろうな。
ノクターナル・アニマルズのストーリー(ネタバレ)
この映画は2つの物語で構成されています。
復讐される人:スーザン(エイミー・アダムス)
復讐する人:エドワード(ジェイク・ギレンホール)
スーザンの物語は現実の世界。
アートギャラリー経営者として成功を収めているスーザンの元に1冊の本が届く。
それは2年間だけ結婚していた元旦那のエドワードが書いた本だった。
タイトルは『ノクターナル・アニマルズ(夜の獣たち)』
1ページ目には、”スーザンに捧ぐ”と書かれていた。
スーザンはノクターナル・アニマルズを読み進める。
本の中で起きる残酷な出来事や、胸が痛くなる描写に感情を揺さぶられる。
スーザンの私生活は旦那の事業が上手くいってなく、さらに旦那は浮気をしていた。
そして、自身が手がけるギャラリーは評判を呼ぶが、自分の中では納得がいってなかった。
そんな時に、ノクターナル・アニマルズを読み、エドワードの才能に気づく。
エドワードと結婚している時は、彼の才能を信じる事が出来なかった。
そして現実的なスーザンはいつまでも夢を見ているエドワードを捨てるのだった。
スーザンはエドワードに連絡を取り、会う段取りを決める。
だが、指定したレストランで待っていたが、エドワードは現れなかった。
ノクターナル・アニマルズの内容
トニー(ジェイク・ギレンホール)は夜のテキサスを、妻と娘と車で走っていた。
すると、前の車両がトニー達の邪魔をし、しまいにはぶつけてくる。
車を止めざるをえない状況になったトニー。
そして、妻と娘を連れ去られるのだった。
トニーは1人荒野に取り残されながらも、必死に歩き助けを求めに行く。
民家を見つけ、警察を呼んでもらい、妻と娘を探しに行くことに。
トニーは警官のボビーと共に、置き去りにされた場所を探す。
すると、その近くで殺された2人を見つけるのだった。
犯人の手がかりが見つからないまま1年が過ぎる。
とある強盗事件の容疑者として、トニーを襲った連中があがった。
トニーは面通しをし、犯人だと確信する。
他の共犯者も見つけ逮捕をするが、証拠不十分の為に保釈されるのだった。
ボビーは犯罪者が蔓延る現状に苛立つ。
そして、自身は肺がんに侵されてる為、余命は1年もないと言う。
そしてボビーはトニーに違法捜査の提案するのだった。
ボビーは釈放された容疑者2人を逮捕し、自らの寝床に連れて行く。
だが、油断した隙に2人はそこから逃げる。
1人をボビーは射殺する。
だが1人には逃げられる。
トニーは逃げた1人を見つけ出し反抗に会うも、射殺する。
そして自身も反抗による怪我により、命を落とすのだった。
ノクターナル・アニマルズの復讐。
これのどこが復讐なんだって思うかもしれない。
まあ文字だと伝えづらいです。
スーザンには軽蔑している母親がいる。
世間体を大事にし、相手のステータスや収入でスーザンの付き合う相手を決めるような人物だ。
そんな母にエドワードと付き合っていた時のスーザンは反発していた。
母の価値観を真っ向から否定していたのだ。
だが、そんなスーザンの現状は母と同じである。
豪華な家に住み、ブルジョアな生活を送っている。
そして、エドワードとの別れた理由も母の価値観と同じだった。
スーザンは現実主義者で、エドワードと一緒にいるのは不幸だと言うのだった。
そして、隠れてエドワードとの子供を堕ろし、付き合う前のハットンに甘えていた。
その現場をエドワードは目撃する。
エドワードはノクターナル・アニマルズのトニーに自分を重ねていた。
妻と娘をレイプされて殺された事。
これは、自分の妻だったスーザンと堕ろした子供の事だろう。
犯人への復讐。
自分の情けなさに涙を流すシーンがある。
犯人が逃げようとしてるのに撃てなかったのだ。
これは、スーザンとの別れを止めれなかった事の後悔だろう。
でも、別れた事は間違ってなかったと思っている。
犯人を殺して、自分も死ぬ所。
これは過去への決別だろう。
スーザンと情けなかった自分との決別。
エドワードはノクターナル・アニマルズを通して、スーザンへの恨み、そして決別を綴った。
冒頭の妻と娘が連れ去られるシーン。
このシーンは不快で仕方がない。
攫ってく男どもの態度はもちろん腹が立つが、何よりも長いのだ。
そんなに詳細に描かなくてもと思ってしまう。
だけど、この長さこそスーザンへの恨みの強さを表してるんだと思った。
ノクターナル・アニマルズの2人。
エイミー・アダムスとジェイク・ギレンホールが対照的に描かれる。
そして2人とも良かった。
エイミー・アダムスは豪華な生活を送っているが、中身は満ち足りていない。
旦那の浮気も気づいているけど、強く感情を表す事もない。
枯れているのだ。
彼女が感情を表すのはノクターナル・アニマルズを読んでいる時だけ。
彼女はエドワードとの再開を心待ちにしていたに違いない。
ノクターナル・アニマルズを読んで、色々な事を話し合いたかったはずだ。
そして、現状を伝えたかったはずだ。
でも、エドワードは来なかった。
涙を瞳にためて終わっていくラストシーンはぐっときた。
そこには後悔と虚しさがあった。
エドワードに求めた未来が、自分にはないと悟ったのだろう。
ジェイク・ギレンホールは終盤までは落ち着いている。
いつもの怪演ではなく、強い印象は残っていない。
でも、銃を撃てなかったシーンは凄かった。
自分に対する怒りと後悔がごちゃまぜになった表情。
やっぱジェイク・ギレンホールだなと思わせてくれた。
『ノクターナル・アニマルズ』のまとめ
なかなか凄いサスペンスです。
こんなに静かで美しい復讐劇はありません。
ただ、人を選ぶのは間違いない。
ここまで復讐と書いてきましたが、劇中では明確に言及はありません。
全く見当違いの事を書いている可能性もあります、、ご容赦ください。
でも、劇中のアート作品で伝えてきてるから、復讐は間違いないはず。
ノクターナル・アニマルズにはエイミー・アダムスとジェイク・ギレンホール以外にも多数のキャストが出演しています。
アーミー・ハマーやアーロン・テイラー=ジョンソンなど。
その中でも、マイケル・シャノンは凄かった。
この人が演じる刑事の存在感。
って思ってたらアカデミー賞にノミネートされてました。
納得です。
PrimeVideoで配信中。
『ノクターナル・アニマルズ』のスタッフとキャストの他の映画
監督:トム・フォード:『シングルマン』
ジェイク・ギレンホール:『ゾディアック』/『ラブ&ドラッグ』/『サウスポー』/『ナイトクローラー』/『ベルベット・バズソー 血塗られたギャラリー』/『エンド・オブ・ウォッチ』
エイミー・アダムス:『オン・ザ・ロード』/『ザ・ファイター』
マイケル・シャノン:『プレミアム・ラッシュ』/『その土曜日、7時58分』/『ハンズ・オブ・ラブ 手のひらの勇気』
*本ページの情報は2019年2月時点のものです。
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