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難解なのに楽しめる。
【ストーリー】
狩りをしていたルウェリン(ジョシュ・ブローリン)は、死体の山に囲まれた大量のヘロインと200万ドルの大金を発見する。危険なにおいを感じ取りながらも金を持ち去った彼は、謎の殺し屋シガー(ハビエル・バルデム)に追われることになる。事態を察知した保安官ベル(トミー・リー・ジョーンズ)は、2人の行方を追い始めるが……。
【キャスト】
トミー・リー・ジョーンズ:エド・トム・ベル保安官
ハビエル・バルデム:アントン・シガー
ジョシュ・ブローリン:ルウェリン・モス
ウディ・ハレルソン:カーソン・ウェルズ
ケリー・マクドナルド:カーラ・ジーン
ギャレット・ディラハント:ウェンデル
テス・ハーパー:ロレッタ・ベル
バリー・コービン:エリス
スティーヴン・ルート:ウェルズを雇う男
ロジャー・ボイス:エル・パソの保安官
ベス・グラント:カーラ・ジーンの母
【スタッフ】
製作総指揮:ロバート・グラフ/マーク・ロイバル
原作:コーマック・マッカーシー
脚本:ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン
音楽:カーター・バーウェル
2007年 122分
<シネマトゥデイより>
ノー・カントリーはコーエン兄弟の代表作だけど、、
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ノー・カントリーはコーエン兄弟の代表作です。
第80回アカデミー賞で8部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞を受賞。
そして、興行成績もコーエン兄弟の中で歴代1位の作品。
まさに彼らを代表する作品で間違い無いのだが、この映画は異色です。
ユーモアがない。
この言葉は劇中で、ハビエル・バルデム演じるアントン・シガーに使われたものです。
この言葉が、『ノー・カントリー』にも当てはまる。
コーエン兄弟と言えばブラックながらユーモアを感じさせる作品が多く、なんならコメディも撮る。
人は死ぬけど、重くない。
そんなイメージだ。
だから、この映画を初めて観たときは驚いた。
こんなにも救いのない話も撮るのかと。
それでも、この作品が彼らの代表作という事に異論はない。
原作は、2005に発表されたコーマック・マッカーシーの小説『血と暴力の国』
原題はウィリアム・バトラー・イェイツの詩「Sailing to Byzantium」の第1句が引用されてます。
ノー・カントリーのストーリー(ネタバレ)
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舞台は1980年のテキサス。
モスは狩の帰りに偶然殺人事件の現場に遭遇する。
麻薬取引の途中に銃撃戦にあったのだろう、大量の麻薬がバンに積まれていた。
モスは金もあるはずだと、辺りを散策する。
すると200万ドルが入ったバッグを抱えたまま生き絶えた男を見つけるのだった。
金を持ち帰った事で、モスは2つの組織から狙われる。
麻薬を買おうとしてたアメリカの組織。
麻薬を売ろうとしたメキシコの組織だ。
モスは妻のジーンを実家に帰し、自身はモーテルに身を潜めながら逃げる。
だが、金の入ったバッグには発信機が入っており、居場所がバレる。
途中、アメリカの組織から雇われていたシガー(ハビエル・バルデム)に何度も命を狙われる。
発信機を逆に利用して返り討ちにしようともしたが、シガーからは逃げるのが精一杯だった。
シガーは自信を狙う殺し屋のウェルズ(ウディ・ハレルソン)を返り討ちにした後、モスに電話をかける。
金を渡せば、お前の妻は助けると。
だが、モスはこの提案を拒否。
モスはジーンと共に高飛びをしようとする。
だが、落ち合おうとしたホテルでモスは殺される。
ジーンはそれを観て落胆するのだった。
その後、ジーンの元に現れたシガーはジーンを殺すのだった。
ジーンを殺した後、車でその場を立ち去るシガー。
交差点に入った所で、信号無視をした車に突っ込まれる。
重傷を負ったシガーだったが、その場を歩いて立ち去るのだった。
ノー・カントリーはあらすじを見ると逃走劇。だけど、、
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ストーリーはだいぶ端折ってます。
主演のベル(トミー・リー・ジョーンズ)出てきてないし。
簡単に言うと3人の逃走劇です。
逃げる人:モス 退役軍人で、たまたま見つけた金を持って逃げたら大変な事に。
追う人:シガー 完全無欠の殺し屋。
2人を追う人:ベル おじいちゃん保安官 何も出来ず。
これだけ観たらヤバイ殺し屋に追われるただの痛快アクション映画みたいだ。
でも、そんなのは冒頭で吹き飛びます。
シガーが繋がれた手錠で保安官を絞め殺す。
その時の顔を是非観てください。
トラウマです。
そこから始まるこの映画は終始静かで重い雰囲気を漂わします。
バックで流れる音は最小限に。
ど田舎が舞台なので景色も代わり映えしない。
そんな中に現れる無慈悲な殺し屋。
目的は金を奪い返す事なんだけど、それが目的と思えない。
ただ、殺すことが目的となっている。
そんな奴が行く先々に現れるのだ。
そして、モスは殺される。
だけど、そのシーンは見せない。
この演出は憎い。
物語のメインで、ずっと追っては逃げてを繰り返していて、途中は激しく撃ち合うシーンもある。
なのに、本来は一番盛り上がるであろう殺しの部分は映さないのだ。
ただ、死体になったモスが映し出されるだけで。
これは呆気にとられたと同時に感心した。
それまでのシガーを見ていたら誰もが気づくのだ。
こいつには勝てない。
シガーの死ぬ所がイメージ出来ないのだ。
そして途中で気づく。
この映画は、逃げれるかどうかを楽しむ映画ではない。
モスは死ぬんだと分かるのだ。
そして、シガーにとってモスを殺す事は日常の出来事なのだ。
だからわざわざ映すまでもなかった。
ノー・カントリーの主演トミー・リー・ジョーンズの無力さ。
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主演はトミー・リー・ジョーンズ演じるベルなんだけど、活躍はしない。
ただ、彼が話す言葉がこの映画を表している。
冒頭のセリフ。
昔の人の話を聞く機会を私は決して逃さない。
どうしても、今の自分と比べて”彼らならどうするだろう?”と思う。
少し前、ある少年を死刑にしたことがある。
私が逮捕し、法廷で証言した。
彼は14歳の少女を殺害した。
新聞は”激情犯罪”と書いたが、本人は”感情はない”と言った。
“誰か人を殺そうと思っていて”
“出所したら、また殺す”と。
“自分は地獄に行く”
“15分後には地獄だ”と
どう考えたらいいのか全く分からない。
最近の犯罪は理解出来ない。
恐ろしいわけじゃない。
この仕事をするには死ぬ覚悟が必要だ。
必要以上にムチャな事をして理解できないものに直面したくない。
だが、魂を危険に晒すべき時は”OK”と言わねばならない。
“この世界の一部になろう”と
ベルは保安官を引退する。
シガーという殺人鬼に出会い、死ぬ覚悟をしたからだ。
そして降りた。
ベルの父親も祖父も保安官だった。
その事に自分も誇りに思っていたし、父親も喜んでいた。
なのに保安官の仕事から降りたのだ。
何故か?
理解出来ないと気づいたから。
<ベル>
俺では力が足りない。
自分が年を取ったら神が人生に入ってくると思った。
だが違った。
神を責めはしない。
俺が神でも、俺を見放す。
<叔父>
この国は厳しい。
何も止められない。
変えられると思うのは、思い上がりだ。
神が人生に入ってくる。
この神とは”許す事”だと思った。
年を重ね経験を積む事で、どんな悪党と出会っても許す事が出来ると。
そんな気持ちが折れたのだ。
純粋な悪であるシガーと出会って。
叔父はシガーと出会ってないから、国に置き換えている。
でも、ベルはそんな大きな存在に対して言ったわけではない。
シガー1人に向けて言った言葉だった。
そして、この諦めの気持ちは見てる側の気持ちでもある。
無慈悲なシガーを見せつけられたら、救いがない事なんて一目瞭然だ。
『ノー・カントリー』のまとめ
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ノー・カントリーは実は難解な映画です。
ここまで触れてませんでしたが、様々な解釈が出来たり、含みを持たせた描写が多い。
シガーとベルは対面したのか。
お金は最後どうなったのか。
最後に語るベルの夢。
それぞれの解釈は任せます。
僕は深く考えない性格と、何となくこんなんかな〜と見るタイプです。
答えがない事を深掘りをして楽しむタイプではない。
そんな奴が映画ブログなんてやるなって感じかもしれませんが。
ただ、難解だとしても楽しめるのがこの映画の凄い所です。
ハビエル・バルデムを見てるだけで十分楽しめますからね。
ノー・カントリーで助演男優賞を受賞しましたが、他のノミネートされた人からしたら、お前が助演かい!って感じでしょう。
気持ち悪い髪型に、独特の武器。
ライトセーバーに並ぶ映画史に残る武器です。
本来は家畜を殺すようの道具なんですが、それで人を殺すって所がシガーらしい。
彼に取っては人も家畜も同じでしょう。
ジョシュ・ブローリンも最高。
ウディ・ハレルソンの死亡フラグも笑える。
これらも細かく書きたいのですが、長くなりすぎるのでこの辺で。
全く救いのない映画ですが、オススメの映画です!
U-NEXT/PrimeVideoで配信中。
『ノー・カントリー』のスタッフとキャストの他の映画
コーエン兄弟:『オー・ブラザー!』
ハビエル・バルデム:『コラテラル』
トミー・リー・ジョーンズ:『クリミナル 2人の記憶を持つ男』/『メカニック ワールドミッション』
ジョシュ・ブローリン:『L.A.ギャングストーリー』
ウディ・ハレルソン:『ラリー・フリント』/『ゾンビランド』/『グランド・イリュージョン』/『グランド・イリュージョン2 見破れたトリック』/『スウィート17モンスター』
*本ページの情報は2019年2月時点のものです。
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