『20センチュリー・ウーマン』☆☆☆☆☆☆☆ 誰の目線になるか。ネタバレ映画レビューブログ

20センチュリー・ウーマン ☆☆☆☆☆☆☆




20センチュリー・ウーマン

見る人によって大きく印象は変わる。

【ストーリー】

1979年のカリフォルニア州サンタバーバラ、自由奔放なシングルマザーのドロシア(アネット・ベニング)は、15歳の息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)の教育に頭を悩ませていた。そこで、ルームシェアしているパンクな写真家のアビー(グレタ・ガーウィグ)と、近所に暮らすジェイミーの幼なじみジュリー(エル・ファニング)に相談する。

【キャスト】

アネット・ベニング:ドロシア

エル・ファニング:ジュリー

グレタ・ガーウィグ:アビー

ルーカス・ジェイド・ズマン:ジェイミー

ビリー・クラダップ:ウィリアム

アリア・ショウカット

ダレル・ブリット=ギブソン

テア・ギル

ローラ・ウィギンス

ナサリー・ラヴ

ワリード・ズエイター

アリソン・エリオット

カーク・ボヴィル

【スタッフ】

監督:マイク・ミルズ

製作総指揮:チェルシー・バーナード

脚本:マイク・ミルズ

音楽 :ロジャー・ニール

2016年 118分

<シネマトゥデイより>

20センチュリー・ウーマンは見る人によって大きく印象は変わる。

20センチュリー・ウーマン

最初から最後まで抜群に雰囲気の良い映画でした。

でも、ただのオシャレ映画って言葉で片付けたくない。

ただ、何かを書くのは非常に難しい映画でした。

上手く捉えられない。

ここが面白い!これが良いよ!って簡単に言えない映画です。

20センチュリーウーマンは誰の目線になって見るかで大きく印象が変わる。

シングルマザーで息子の変化に悩むドロシアなのか。

母の干渉と友情と恋心に悩むジェイミーなのか。

内面は脆いがパンクな生き方のアビーなのか。

小悪魔的存在の幼馴染ジュリーなのか。

男性と女性、子供がいるかいないか、兄弟がいるかいないか、育ってきた環境。

それぞれの人生経験によって受け取り方が大きく変わります。

ただ、誰もが見てよかったと言う映画だと思う。

20センチュリーウーマンは静かで温かくて悲しくて不安で、、様々な感情を抱く映画です。

20センチュリー・ウーマンのストーリー(ネタバレ)

20センチュリー・ウーマン

1979年のカリフォルニア州サンタバーバラに住むドロシア(アネット・ベニング)。

ドロシアはシングルマザーで、前の夫とは離婚してから連絡を取らず、新しい男も作らなかった。

ドロシアは15歳の息子ジェイミーとの接し方に悩んでいた。

ジェイミーの趣味や行動が理解できなかったのだ。

そこで、ルームシェアをしているアビー(グレタ・ガーウィグ)と幼馴染のジュリー(エル・ファニング)にジェイミーの相談をする。

ジュリーには見守り役を、アビーには生き様を見せてほしいと頼む。

ジュリーとアビーは戸惑うが了承する。

だが、それを知ったジェイミーは嫌な顔をするのだった。

その後、ジェイミーはアビーに音楽を教えてもらったり、クラブに連れていかれたり外の世界を知っていく。

ジュリーには恋心を抱いていたが、ジュリーにその気はなく、だが距離の近い関係に悩むのだった。

思春期かつ反抗期真っ只中のジェイミーとドロシアはその後もぶつかり合う。

ドロシアはジェイミーに幸せになってほしいだけだった。

ジェイミーは母がいればそれで良かった。

気持ちをぶつけ合った2人は壁がなくなったのを感じるのだった。

20センチュリー・ウーマンのストーリーを説明する難しさ。

20センチュリー・ウーマン

子供を心配する母親と、そんな母親が鬱陶しい子供の話し。

こう書いてしまうと陳腐な話しに聞こえてしまうのが嫌だ。

20センチュリーウーマンは要約出来ません!

人生は要約できねえんだよ。
人ってのは毎日毎日、
必死に生きてるわけだ。
つまらない仕事をしたり、
誰かと言い合いしたり。
そういう取るに足りない出来事の積み重ねで、
生活が、人生が、出来上がってる。だろ。

ただな、もし
そいつの一生を要約するとしたら、
そういった日々の
変わらない日常は省かれる。
結婚だとか離婚だとか、
出産だとか転職だとか、
そういったトピックは残るにしても、
日々の生活は削られる。
地味で、くだらないからだ。でもって
「だれそれ氏はこれこれこういう人生を送った」
なんて要約される。

でもな、本当に
そいつにとって大事なのは、
要約して消えた日々の出来事だよ。
それこそが人生ってわけだ。

(モダンタイムス、伊坂幸太郎)

まさにこれなんです。(伊坂幸太郎が好きで、彼の本は全て読んでます)

20センチュリーウーマンに登場する人物はそれぞれ悩みや抱える物がある。

一人一人の物語がちゃんとある。

でも、それを要約で伝えようとしたら大事な物が伝わらない映画です。

何気ない会話や表情ややりとり。

これらは要約すると登場しない。

でも、その部分に20センチュリーウーマンの大事な部分が全て入っています。

ただ、最後のシーンが凄い良かった事は書いておきます。

ジェイミーは途中、母親に幸せかどうか聞く。

彼にとって母親は無味乾燥の今を送り、何に楽しみを見出しているのかが理解出来なかった。

そしてそんな人生がかわいそうだと思っていた。

そんな母親が考えていたのはジェイミーの幸せだ。

「よく聞きなさい 私が望んだのは あなたには私のようになってほしくない」

「どういう意味?」

「幸せになってほしいのよ でも私一人では無理だと思って、、、」

「そうなの? 僕は母さんがいれば大丈夫だ」

結局、どの家庭でも同じ悩みなんだと思わせてくれる。

20センチュリーウーマンみたいな特殊な状況だろうと、親子の悩みはどこも同じ。

親は子供を心配するし、子供はそれに気づかない。

でも、親子は傷つけたい訳ではない。

ただ、理解がしたいだけなのだ。

それを言葉にするのが難しく、素直に言えないから推測し、周りを巻き込みややこしくさせる。

素直に言い合えば、こんな単純な事なのに。

このセリフの後の2人のやりとりは最高だった。

そして、この言葉も良かった。

“今後は何でも話してくれる あの時はそう思った だけどそんな母は一度切りだった”

これがたまらなくいい!

この後は打ち解けて何でも話し合える家族になりました的な嘘くささはこの家族には似合わない。

一度きりって所、でもそれで信頼が築けたと確信出来た事。

それだけで、この親子は十分なのだ。

20センチュリー・ウーマンのエル・ファニング。

20センチュリー・ウーマン

20センチュリーウーマンはドロシアとジェイミーを中心に描かれるけど、それを取り巻く人物たちも非常に魅力的です。

パンクな生き方をしながらも、心には子供を産むのは難しいと言われ、傷を負っているアビー。

ジェイミーにかっこいい男とはどんなものかを教え、人として成長するなら出ていくしかないと諭す。

彼女もまた、ジェイミーに自分みたいになってほしくないと感じていたはずだ。

アビー演じるグレタ・ガーウィグの赤髪にはビックリした。

マギーズ・プランのイメージがあったから、そしてパンクなイメージが全くない。

悪くなかったけど、合っていたかどうかは、、置いておこう。


何よりもエル・ファニング演じるジュリーです。

この小悪魔は本当に質悪い。

15歳の男の子の心を弄ぶわ弄ぶわ。

これは男なら気持ちが分かるはずです。

たまったもんじゃない。

幼馴染の可愛い年上の姉ちゃんが、夜中こっそりと添い寝をしてくる。

誘惑するような目をするけど、セックスはさせない。

まさに生殺し。

終盤、街を抜け出してモーテルに行ってもセックスはなし。

なんならこんな事を言う。

「あんたとは親しすぎてセックスは出来ない 分かんないよね ごめん」

「協力する 乗り越えよう」

「乗り越えたくない」

「嘘だ」

「他の男と同じね」

「セックスだけじゃない 君がほしい」

「あなたの考える私でしょ それは私じゃない セックスだけの方がマシ あんたも普通の男だよ 今風なフリしてるだけ」

めっちゃジェイミーを傷つけるやん!

もちろんわざと突き放してるんだけど、、

でも、一緒にモーテル行って、下着姿でベッドに座りながら言わなくても、、煙草もふかしてるし。

こんなん15歳の男の子からしたら生き地獄ですからね。

だってやる気まんまんなんですから。

このセリフを言われた後のジェイミーの表情を是非見てほしい。

一生女性の事信じる事出来ないだろうな、、

って思ったら、次の日は普通にジュリーとハグをしてるっていう、、

ジュリーよ、どんだけ心を弄ぶんだ。

ただ、めっちゃ可愛いんですけどね。

『20センチュリー・ウーマン』のまとめ。

20センチュリー・ウーマン

見る人によって大きく印象が変わる映画です。

監督のマイク・ミルズの名作『人生はビギナーズ』が好きな人は、20センチュリーウーマンも好きなはず。

この独特な柔らかい空気感は言葉じゃ伝わりません。

見終わった後は、なんか良いもの見たな。でも、この”なんか”って上手く言えないな。

そんな気持ちになります。

自分がいつか親になったら、20センチュリーウーマンを見せたいなと思わせてくれました。

ちなみにアカデミー賞では脚本賞にノミネートされています。

アネット・ベニングの最高の演技を是非。

U-NEXTで配信中。

『20センチュリー・ウーマン』のスタッフとキャストの他の映画。

監督:マイク・ミルズ:『人生はビギナーズ』

アネット・ベニング:『キッズ・オールライト』/『ルビー・スパークス

エル・ファニング:『幸せへのキセキ』/『ネオン・デーモン』/『LOW DOWN ロウダウン

グレタ・ガーウィグ:『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』/『ローマでアモーレ


*本ページの情報は2019年3月時点のものです。
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