ザ・ビーチ・ボーイズを知らない人も!
【ストーリー】
バンド「ザ・ビーチ・ボーイズ」の人気が過熱していた1960年代のカリフォルニア。うなぎ上りの人気とは裏腹に、新たな音楽を模索してスタジオで曲作りに没頭するブライアン(ポール・ダノ)は、新作へのプレッシャーによって精神的に参ってしまう。それから二十数年、ブライアン(ジョン・キューザック)はメリンダ(エリザベス・バンクス)と出会ったことで……。
【キャスト】
ジョン・キューザック:80年代のブライアン・ウィルソン
ポール・ダノ:60年代のブライアン・ウィルソン
エリザベス・バンクス:メリンダ・レッドベター
ポール・ジアマッティ:ユージン・ランディ
ジェイク・アベル:マイク・ラブ
ケニー・ウォーマルド:デニス・ウィルソン
ブレット・ダヴァーン:カール・ウィルソン
グレアム・ロジャース:アル・ジャーディン
ジョアンナ・ゴーイング
ディー・ウォーレス
マックス・シュナイダー
タイソン・リッター
ジョナサン・スレイヴィン
ダイアナ・マリア・リーヴァ
ニック・ゲールフース
ジョニー・スニード
エリン・ダーク
【スタッフ】
監督:ビル・ポーラッド
製作総指揮:アン・ロアク/ジム・レフコヴィッツ/オーレン・ムーヴァーマン
脚本:オーレン・ムーヴァーマン/マイケル・アラン・ラーナー
音楽 :アッティカス・ロス
2015年 122分
<シネマトゥデイより>
ラブ&マーシーはザ・ビーチ・ボーイズの映画。
ザ・ビーチ・ボーイズで作詞作曲をしているブライアン・ウィルソンの伝記映画です。
平成生まれの僕はザ・ビーチ・ボーイズの事をほとんど知らなかった。
名前は聞いた事あるけど曲は知らない。
でも、劇中で流れる曲を聞いてこれってザ・ビーチ・ボーイズの曲だったんだって分かる。
ラブ&マーシーはその程度の知識しかない僕でも楽しめる映画でした。
でも、きっともっと知っていたらより楽しめる映画であるのは間違いない。
当時の時代背景やザ・ビーチ・ボーイズの遍歴を知ってる人ほどより楽しめるはずです。
ブライアンの成功から挫折、崩壊からの再生を描いています。
見ていて辛い場面が多く、こんな事実があったのかと驚愕します。
壊されていく天才を見るのは辛かった。
自分で壊れていく部分もあるけど、ブライアンは壊された。
幼少期〜青年期は父親に、大人になってからは精神科医に。
そんなブライアンをポール・ダノとジョン・キューザックが完璧に演じています。
特にポール・ダノは素晴らしかった。
ブライアンに似せる為に体型を変えてるのに1番驚いたけど、印象に残ってるのは静かに涙を流す場面。
レコーディング中に親父が来た後、ヘッドフォンを着けると幻聴が聞こえる。
そして静かに涙を流す。
その後ドラッグに溺れ心が壊れていく。
その様を繊細に演じています。
ラブ&マーシーのストーリー(ネタバレ)
1960年代、ザ・ビーチ・ボーイズは成功を収めていた。
だが、バンドでツアーを行っている途中、作詞作曲を担当していたブライアン(ポール・ダノ)は発作を起こす。
この事から、ブライアンだけツアーから離脱しスタジオに篭り楽曲制作に専念する事に。
ブライアンは類稀な才能を発揮し、スタジオミュージシャンと共に楽曲制作を進めていく。
バンドメンバーがツアーから帰ってきて、出来上がった曲を聞かせるブライアン。
だが、それらの曲は今までのザ・ビーチ・ボーイズの楽曲とはかけ離れた音楽であり、メッセージ性も異なっていた。
バンドメンバーと揉めながらも楽曲制作を続けるブライアンだったが、父親にも悩まされる。
父親は元々ザ・ビーチ・ボーイズのマネージャーだったがクビにした経緯があった。
父親は幼い頃からブライアン達に暴力を振るっていたが、ブライアン達は父親を嫌いな訳ではなかった。
そんな父親がレコーディングスタジオに現れ、ザ・ビーチ・ボーイズに似たバンドをプロデュースし、人気者にさせるとわざわざ言いに来る。
それを聞いたブライアンは静かに涙を流すと共に、幻聴にも悩まされるのだった。
ブライアンはその後ドラッグに溺れ、名曲を生み出しつつも奇行やメンバーと父親との確執は解消されず、精神が崩壊するのだった。
1980年代。キャデラックのディーラーでメリンダはある男を接客する。
その男は少し様子がおかしかったが、メリンダは惹かれるのだった。
その男が店を出る時に、一緒にいた精神科医のユージン(ポール・ジアマッティ)から、あの男はザ・ビーチ・ボーイズのブライアン(ジョン・キューザック)だと教えられる。
ブライアンは精神が崩壊した後、3年寝たきりの生活を送り、体重は100キロを超えていたが、ユージンによってなんとか普通の生活を送れるようになっていた。
ブライアンはユージンに妄想型精神分裂症と診断されていた。
その後ブライアンとメリンダはデートを重ね、お互いに惹かれ合っていく。
だが、デートにはユージンや彼の息のかかった者が同行し、常にブライアンを監視していた。
メリンダはユージンが大量に薬を飲まされている事や、ユージンによる度を超えたブライアンへの叱責や監視、行動の制限に違和感を覚える。
ある日、ブライアンの家で家政婦をしている女性からもユージンの治療がおかしいと言われる。
メリンダは家政婦と手を組みユージンの不正行為の証拠を手に入れ、ブライアンからユージンを引き離す事に成功する。
ある日、メリンダの前に現れたブライアンは自分の気持をメリンダに告げるのだった。
ラブ&マーシーでブライアンを壊す2人。
見ていて辛いシーンが多かった。
ブライアンは自分の頭で鳴っているメロディーを曲にしたかっただけなのだ。
それなのに周りが邪魔をする。
バンドメンバーとの確執はしょうがない部分がある。
マイクと1番反りが合わなかったが、マイクにはマイクの考えがあった。
聴いてくれるファンが喜ぶ曲を作って欲しいマイク。
自分のやりたい音楽を作りたいブライアン。
この確執はしょうがない。
さらにビジネスの部分も加わると、どっちが良い悪いでは語れない。
ただ、明らかに父親とユージンはブライアンを壊した。
ブライアンの父親、マリー・ウィルソン(ビル・キャンプ)
父親は元マネージャーだったが、ブライアンによってクビにされた過去がある。
何でクビになったかは語られない。
ただ、元々暴力親父だった事は確かで、その暴力のせいでブライアンは右耳の聴力を失っている。
ブライアンは父親の事を心から嫌っている訳ではなかった。
新しく浮かんだメロディーを父親に聞かせて感想を求めたりもしていた。
だが、父親はブライアンを許さなかった。
感想を聞かれても答えず、お前は俺をクビにしたから、、、
ザ・ビーチ・ボーイズに似たバンドのプロデュースをして、トップを取るんだとわざわざ言いに来る。
最後はザ・ビーチ・ボーイズの権利を勝手に売却して大金を稼ぐと、、、
最低の親父なんです。
人として終わっている。
過去に何があったか語られなかった分、父親の存在は悪魔にしか見えなかった。
ザ・ビーチ・ボーイズに似たバンドのプロデュースをして、トップを取るんだとわざわざ言いに来た時、ブライアンはレコーディング中だった。
他のバンドのプロデュースの事を聞いた後、レコーディングに戻るブライアン。
だが、ヘッドフォンを着けると幻聴が聞こえる。
そして静かに涙を流す。
その後ドラッグに溺れだす。
他のバンドのプロデュースが悲しくて涙を流した訳ではないと思う。
父親との関係が終わったと確信したからでもないと思う。
純粋に自分の耳に聞きたくない音楽が聴こえるようになってしまった事にショックを受けたんだと思う。
冒頭にこんなセリフがある。
時々 考えると怖くなるんだ。
僕の中には別の誰かが住んでいる。
もし、その誰かを永遠に失ったら?
僕はどうなる?
ブライアンの周りはブライアンの事を天才だと褒め称えた。
でもブライアン自身は常に不安と戦っていた。
非常に脆い状態だったのだ。
そんなブライアンを壊したのは父親だった。
精神科医、ユージーン(ポール・ジアマッティ)
精神が崩壊したブライアンを救っているように見せかけて、搾取し続け、壊し続けたユージーン。
彼はブライアンを薬漬けにした挙げ句、自分の思い通りにブライアンを動かし、搾取を続けた。
ユージーンの本心はメリンダに言い放ったセリフに詰まっていた。
「金を巻き上げるんならちゃんと列に並べ」
ユージーンとブライアンの出会いは語られないから分からない。
最初からカネ目当てで近づいたのかは分からない。
でも、ユージーンが寝たままで太りに太ったブライアンを外に出せるようにしたのは間違いなさそうだ。
最初は本当に治療をしていたのかもしれない。
だとしたらこんな悲しい事はない。
ブライアンがユージーンを切る事が出来なかったのは過去の恩があったからな気がする。
何がユージーンを変えてしまったのか。
それが知りたかった。
ラブ&マーシーだと最初から最後まで嫌な奴で終わってるから、、
大好きなポール・ジアマッティだけにショックだ。
ラブ&マーシーのブライアンを演じた2人。
一人二役で演じられたブライアン。
1960年代はポール・ダノ、1980年代はジョン・キューザックが演じる。
ポール・ダノは素晴らしかった。
音楽をやる時の嬉しそうな顔。
心から音楽を愛していた。
そこからドラッグに溺れてからの虚ろな表情や挙動不審な行動。
見ていて心が痛くなった。
最後、娘が初めて笑ったと報告する妻の声に、全く反応を示さないブライアン。
その時のポール・ダノの表情。
役に入りきってました。
ジョン・キューザックも良かったです。
メリンダと過ごす時の楽しい表情からユージーンに怯える表情まで。
全ての行動や表情が虚ろだった。
そんなブライアンを優しく受け止めるメリンダに惚れます。
『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』のまとめ
ザ・ビーチ・ボーイズを知らなくても楽しめます。
ですが、知っている人の方がより楽しめます。
最近流行りの音楽映画とは違い、心が痛くなるシーンが多く後味もスッキリはしない。
ただ、エンドロールに流れるブライアンが歌う姿を見ると鳥肌が立ちます。
ブライアンの今があって本当に良かった。
ラブ&マーシーで語られる過去だけを見ると不幸な結末になっていてもおかしくない。
それを支えたメリンダは素晴らしい女性だ。
ちなみにタイトルのラブ&マーシーは、ブライアンが復活した88年のソロ第1作『ブライアン・ウィルソン』の1曲目に収録されている曲タイトルです。
U-NEXTで配信中。
『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』のスタッフとキャストの他の映画
監督:ビル・ポーラッド:『それでも夜は明ける』(製作)
ポール・ダノ:『LOOPER/ルーパー』/『テイキング・ライブス』/『リトル・ミス・サンシャイン』/『ルビー・スパークス』/『スイス・アーミー・マン』
ジョン・キューザック:『マップ・トゥ・ザ・スターズ』
ポール・ジアマッティ:『WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々』
*本ページの情報は2019年3月時点のものです。
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