『イカとクジラ』☆☆☆☆☆ 結局何も変わらない。 ネタバレ映画レビューブログ

イカとクジラ ☆☆☆☆☆




イカとクジラ

思ってるような家族の話ではない!

【ストーリー】

かつては人気作家だったが今は落ち目のバーナード(ジェフ・ダニエルズ)と新進気鋭の作家ジョアン(ローラ・リニー)の夫婦、は離婚を決意した。そのため、2人の子どもで、16歳のウォルト(ジェス・アイゼンバーグ)と12歳のフランク(オーウェン・クライン)は、父親と母親の家を行き来するややこしい生活を余儀なくされる。

【キャスト】

ジェフ・ダニエルズ:バーナード・バークマン

ローラ・リニー:ジョーン・バークマン

ジェシー・アイゼンバーグ:ウォルト・バークマン

オーウェン・クライン:フランク・バークマン

ウィリアム・ボールドウィン:アイヴァン

アンナ・パキン:リリー

ヘイリー・ファイファー:ソフィー

ケン・レオン

【スタッフ】

監督:ノア・バームバック

脚本:ノア・バームバック

音楽:ブリッタ・フィリップス/ディーン・ウェアハム

2005年 81分

<シネマトゥデイより>

イカとクジラはよくある家族の話ではない。

イカとクジラ

イカとクジラというタイトル。

牧歌的な雰囲気のあるポスター。

穏やかなイメージのあるキャスト。

離婚した夫婦とその家族のストーリー。

これらだけを見て想像する話は、夫婦の喧嘩、家庭の崩壊、仲直り、再生。

こんな感じの映画だと思っていた。

よくある心温まるストーリーなんだろうな。

やっぱり家族は一緒にいなくちゃね。

みたいな。

えっと、、全然違います。

夫婦は仲直りせず、息子との心温まるストーリーもほぼない。

母親も父親も人として問題がある。

息子2人は絶賛反抗期かつ思春期。

最後まで家族は元どおりにならず、それを匂わせる事もない。

イカとクジラは冷静になるとめちゃめちゃ不幸な話。

それをウィットに富んだ会話や音楽で軽やかに見せる。

だけど、僕はあまりハマれなかった。

おそらく監督の意図を汲み取れなかったんだろう。

劇中の会話に出てくる俗物な人間なのかもしれない。

イカとクジラで赤裸々に語る両親に、、、

イカとクジラ

父親:バーナード(ジェフ・ダニエルズ)

元人気作家で文学に詳しく、自分は高尚な人間だと思い込んでいる。

本を読まない人を俗物と切り捨て見下している。

息子には自分の価値観を押し付ける。

息子に卓球で負けそうになるとキレる。

新しい本を書いても出版社に断られる。

学生の恋人を作るが逃げられる。

お金がない。

ストレスで倒れるが命に別状はない。


母親:ジョーン(ローラ・リニー)

勢いに乗る人気作家。

浮気ぐせがあり、過去何人とも浮気をしていた。

この浮気のせいで離婚をする事に。

息子に浮気の詳細を赤裸々に話す。

浮気相手が来てる時は息子が家に来ようが追い返す。

復縁する気はさらさらない。


長男:ウォルト(ジェシー・アイゼンバーグ)

父バーナードの影響を濃く受けている。

母親の事を下に見ていて、離婚も母親のせいだと言う。

作家としても父親の方が格が上だと言う。

見栄を張る癖がある。

発表会で披露した自作の歌は盗作だし、提出したギャッツビーのレポートも未読である事がバレる。

女性経験に乏しく無神経な発言で相手に呆れられる。

童貞であり、早漏でもある。

父親が連れてきた恋人に恋をしてしまい苦悩する。


次男:フランク (オーウェン・クライン)

母ジョーンの事が好き。

通っているテニススクールのコーチに憧れを抱いている。

口が悪い。

ビールを飲んでいる。

性に目覚めたばかりで自慰行為に夢中になる。

自慰行為をした後の液体を所構わずなすりつける性癖がある。

それが学校にバレて親が呼び出される。

親がいない時に部屋に忍び込み母親の下着を出しコンドームも着けようとする。


こんな4人家族の話です。

両親が離婚、息子達は家を行ったり来たり。

それぞれ絶賛反抗期かつ思春期。

結局最後までこの家族はバラバラのまま。

父親のバーナードは最後に歩み寄ろうとする。

「君の不満は私のヤル気のなさだった 今は何でもやる 子供の好きなカツレツも作る もっと4人で過ごせないか」

このセリフを言った後のジョーンが衝撃だった。

堪えきれずに笑い出すのだ。目に涙を溜めて。

息子達が見ているのに。

彼女は完全に未練がなく、浮気した罪悪感もなく、自分が楽しければいい人だった。

その後、バーナードは発作を起こして倒れてしまう。

救急車に運び込まれる時バーナードがジョーンに言ったセリフが

「”デゴラス” “最低”って意味さ 忘れた? 『勝手にしやがれ』の最後のセリフだ 一緒に見ただろ 君のお腹にはウォルトがいた」

過去の幸せだった時と、今の最低な状況。バーナードのキャラ。

これらを見事に表している最後だった。

バーナードが死ぬ訳じゃないけど。

あとは盗作がバレたウォルトがカウンセラーとの会話でいい思い出を聞かれた時に話す。

「6歳の頃パーティを抜けて『ロビンフッド』を見た 一緒に抜け出したのが嬉しかった あの頃は友達みたいに一緒に色々やった 自然史博物館で怖い展示を見たり イカとクジラの格闘は指の間からやっと見た」

この後も母親との楽しい過去を話すウォルト。

父親は?

「パパは、、どこにいたっけ。多分書斎に。博物館には来ていない」

今は父親寄りで母親を蔑んだ目で見ているウォルト。

だが、楽しい記憶で出てくるのは母との思い出だった。

それが何とも切ない気持ちにさせた。

イカとクジラでも童貞キャラのジェシー・アイゼンバーグ。

イカとクジラ

イカとクジラのキャストはみんな良かった。

ジェフ・ダニエルズの強く見せているけど弱い父親。

ローラ・リニーの自分の楽しさを優先する自由な母親。

でも子供達の方が最高だった。

長男のジェシー・アイゼンバーグはこの時から童貞キャラだ。

彼女はいるけど気持ちが定まらない役。

多分好きだったと思う。

でも、一般的に可愛いとは言いづらい彼女の事を恥ずかしいとも思っていた。

友達と街で会った時には繋いでいた手を離したり、父親にもしきりに相談していた。

それで父親が連れてきた彼女にも淡い恋心を抱いてしまう。

このもんもんとした微妙な心情をジェシー・アイゼンバーグは完璧に演じている。

手だけでイってしまい焦るシーンは彼しか似合わないだろう。

あの慌てぶりはさすがだ。

次男のオーウェン・クラインの性の目覚めも笑えた。

早くないか?とは思ったけど、、

図書館の本に自分の精液をつけたりロッカーにつけたりと、、女性は引いてしまうかもしれない。

こんな難しい役をよくやったものだ。

イカとクジラのキャストは良い!この家族は嫌だけど!

『イカとクジラ』のまとめ

イカとクジラ

この映画のタイトル『イカとクジラ』は自然史博物館に展示されている”ダイオウイカとクジラの決闘”の事です。

ウォルトが小さい頃怖くて直視出来なかったほど迫力のある作品だ。

イカとクジラの最後にウォルトはこの展示を見に行く。

クジラに食べられるイカを見て何を思ったのだろうか。

昔は恐怖の対象だった展示を普通に見れるようになり、時の流れと成長を表しているのか。

食べられてるイカを誰かに重ねたのか。

イカとクジラを両親になぞらえ、直視出来る存在になった事を伝えているのか。

色々な解釈が出来る最後です。

でも、そんなんされた所でこの映画が面白かったとは言えない。

文化の違いだけど、子供を無視して自分の幸せを追い求める母親には嫌悪感を。

父親はまるで尊敬できない行動や言動。

息子達は両親の離婚よりも目の前の生活が大事という、、、

誰に共感したらいいか分からない映画だった。

ストーリーも何か進展がある訳でもなく、起伏がない。

僕にはイカとクジラの楽しみ方がわからなかった。

監督のノア・バームバックはウェス・アンダーソン監督の脚本を幾つか手がけている。

好みが分かれるのも納得だ。

U-NEXTで配信中。 

『イカとクジラ』のスタッフとキャストの他の映画

監督:ノア・バームバック:『ヤング・アダルト・ニューヨーク

ジェフ・ダニエルズ:『ペーパーマン』/『LOOPER/ルーパー

ローラ・リニー:『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ

ジェシー・アイゼンバーグ:『ジェシー・アイゼンバーグ おすすめ映画ランキングまとめ


*本ページの情報は2018年11月時点のものです。
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