『シング・ストリート 未来へのうた』☆☆☆☆☆☆☆☆ 眩しすぎる。ネタバレ映画レビューブログ

シング・ストリート 未来へのうた ☆☆☆☆☆☆☆☆




シング・ストリート 未来へのうた

ジョン・カーニーの集大成。

【ストーリー】

1985年、ダブリン。両親の離婚やいじめで暗い日々を過ごすコナー(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)は、音楽好きな兄と一緒にロンドンのミュージックビデオを見ることが唯一の楽しみという14歳。ある日、ラフィナ(ルーシー・ボーイントン)を見掛け瞬く間に恋に落ちた彼は、思わず「僕のバンドのPVに出ない?」と口走ってしまう。慌ててバンドを組んだコナーは彼女を振り向かせようと、クールなPVを撮るため音楽活動に奔走する。

【キャスト】

フェルディア・ウォルシュ=ピーロ:コナー

ルーシー・ボーイントン:ラフィーナ

マリア・ドイル・ケネディ:ペニー

エイダン・ギレン:ロバート

ジャック・レイナー:ブレンダン

ケリー・ソーントン:アン

ベン・キャロラン:ダーレン

マーク・マッケンナ:エイモン

ドン・ウィチャリー:バクスター

【スタッフ】

監督:ジョン・カーニー

製作総指揮:ケヴィン・フレイクス/ラジ・シン/ボブ・ワインスタイン/ハーヴェイ・ワインスタイン

脚本:ジョン・カーニー

2016年 105分

<シネマトゥデイより>

シング・ストリートはジョン・カーニーの集大成。

シング・ストリート 未来へのうた

ジョン・カーニーの音楽映画。

今度の舞台は1980年代のアイルランド。

不況真っ只中の国で、高校生がバンドを始める。

きっかけは女の子を振り向かせる為。

音楽を通して主人公の不満や希望や想いが歌われる。

紆余曲折を経て、ハッピーエンド。

 

ストーリーだけ見ると、ホントどうって事ない映画だ。

小説や映画でよく見る青春バンドストーリー。

特筆すべき所はない。

 

でも、この映画は観た人全員の背中を押してくれる。

分かっていても、少年の成長を見ていて嫌な気持ちになる人はいないはずだ。

この映画の主人公はピュアだから。

眩しくて直視できないぐらいに。

 

自分が作った曲を通して、心情を吐露する。

その曲で相手の背中を押したり、心を震わせる。

それをバンドメンバーと演奏する。

全員がおふざけじゃなく、本気で取り組む。

高校生だからって言い訳をする人は誰もいない。

そこが潔く、気持ちよく、眩しい要因だ。

 

以前紹介した『はじまりのうた』は寄り添ってくれる映画と紹介しました。

この映画は”背中を押してくれる”映画です。

ジョン・カーニー作品で一番エネルギーを秘めた映画です。

そして、彼の映画の集大成です。

『はじまりのうた』を楽しめなかったわけではないけど、キーラはどこへ行くにも取り巻きを連れていて、思うように仕事ができなかった。だからアイルランドに戻って、誰にも邪魔されない映画を作りたかったんだと語っている。

<シネマトゥデイより>

こんな事を言ってましたからね、、、

後日、キーラ・ナイトレイに謝罪があったので良かったですが。

シングストリート 未来へのうたのストーリー(ネタバレ)

シング・ストリート 未来へのうた

1985年のアイルランド。

コナーの父親は不況の影響で失業し、母親と喧嘩を繰り返し離婚寸前だった。

生活費を切り詰める為、コナーは学費のかからない公立校に転校をするはめに。

新しく行く学校は”シングストリート高校”モットーは”雄々しくあれ”だ。

コナーは今まで行っていた学校との違いに戸惑う。

学校長は校則に厳しく、いじめっ子にも目をつけられてしまう。

そんなコナーに救いの手を差し伸べたのがダーレン。

ダーレンもいじめられっ子だったが、その経験を活かして校内コンサルタントをしているのだった。

2人が帰宅する時、コナーは学校の前のマンションで佇む女性に目を奪われる。

ダーレンから彼女はモデルで、歳上の彼氏がいる事を教えてもらう。

コナーはいてもたってもいられず話しかけに行く。

彼女の名前はラフィーナ。

コナーは彼女の気を引くためにバンドをやってもいないのに、バンドのPVに出演してくれと頼むのだった。

ダーレンをマネージャーにし、彼のつてを使い、楽器のスペシャリストで作曲も出来るエイモンを紹介してもらう。

他にも校内や地域の知り合いからメンバーを集め、なんとかバンドの体裁を整える。

初めてのセッションで自己満足をしたメンバーだったが、コナーの兄に曲を聴かせた所、最低な音楽と言われる。

コナーの兄は音楽マニアで、コナーはこの兄から大きく影響を受けていた。

酷評された理由はカバー曲だったからだ。

人の曲はやるなと助言を受け、エイモンと共に曲作りに励むようになる。

オリジナル曲が完成し、ラフィーナを誘ったPV撮影に挑むバンドメンバー。

それぞれが思い思いに衣装を用意した為にバラバラで、撮影に参加したラフィーナは呆れる。

だが、彼女はPV撮影がよりよくなる為にメイクを担当してくれるのだった。

PV撮影は順調に終わり、コナーはラフィーナを自転車で家まで送り届ける。

そこにラフィーナの彼氏が車で迎えに来る。

コナーはショックを受けるが、その想いを曲にしてラフィーナに聞かせるのだった。

コナーはますます音楽にのめり込むのと、ラフィーナへの気持ちが強くなる。

ロックミュージシャンへの憧れから、髪を染めメイクをして学校に行って校長に怒られたりする。

学校の帰り、コナーが出て来るのを待っていたラフィーナ。

ラフィーナは彼氏とロンドンに行く事、そして楽しい曲を作ってほしいとコナーに頼む。

ラフィーナは「悲しみの喜びを知って」と言い、それが愛だとコナーに説くのだった。

コナーは頭を悩ませながらもその言葉を解釈し、曲を作るのだった。

新たなPV撮影で海辺に行ったメンバーとラフィーナ。

ラフィーナが海に落ちる演出で、実際に落ちなくてもいいのにラフィーナはカナヅチなのに海に飛び込む。

溺れてるラフィーナを助けたコナーは、何事も半端はだめとラフィーナに言わる。

コナーは勢いに任せてキスをするのだった。

コナーの家庭は崩壊するが、ラフィーナとの関係は上手くいっていた。

ある日、2人で船に乗りとある島に行って夢や音楽について語り合い、またキスをするのだった。

ラフィーナに次のPV撮影の日を告げたコナーだったが、その撮影日にラフィーナは来なかった。

彼女の家に向かったコナーはラフィーナがロンドンに旅立った事を知る。

ショックを受けて寝れない日もあったが、ある日ラフィーナと出会う。

ラフィーナの彼氏はロンドンに伝手などなく、帰ってきていたのだった。

ラフィーナはモデルとしても自信を失くし、少し卑屈になっていた。

コナーはそんなラフィーナにショックを受けつつも、詞を書くのだった。

バンドはプロムに向けて準備をし、ライブは大成功。

校長を揶揄するような曲まで披露するのだった。

ライブを見にきたラフィーナと共に、コナーは家に帰る。

兄貴にロンドンに行きたいから車を出してくれと頼んだコナー。

コナーとラフィーナは船着場まで送ってもらい、船でロンドンを目指すことに。

航海は荒波に揉まれながらも、2人は笑顔で航海するのだった。

シング・ストリートの王道ストーリー。

シング・ストリート 未来へのうた

誰が見ても納得のいくストーリーです。

冴えない主人公に憧れのマドンナ→過酷な環境に揉まれながらも心を通わせる→バンドで盛り上がり2人は結ばれる。

ホントこれだけなんだけど、グッとくる。

特に兄貴のブレンダンとの関係。

ブレンダンは音楽マニアで大学中退で引きこもりで大麻好きのニート。

でも、元々は優秀でギターも弾けてイケてる人間だった。

自称だけど。

ドイツの大学に行きたかったが、母親に反対され夢を断たれてからおかしくなった。

最初、コナーが音楽に夢中になるのを後押しし、宿題と称して良いバンドのレコードを聴かせていた。

そして様々な言葉でコナーを導く。

「他人の曲で口説くな」

「パブでも結婚式でもどこでもカバー・バンドが出るが、奴ら親父は真剣に音楽をやった事がない。

曲を書く根性もない ロックは覚悟を持て」

「フィルコリンズを聴く男に女は惚れない」

こんな感じで後押ししてたブレンダンだが、親の離婚により様子が変わる。

大麻をやめたからと言い訳をしていたが、コナーにきつい言葉を浴びせるのだ。

最悪の両親の元で産まれ、自分1人で道を切り開いてきた。

だけど、今は引きこもりのニート。

コナーはバンドに楽しみを見出し、彼女とも上手くいっている。

この差に戸惑ったのだろう。

自分が切り開いた道の後ろを歩いてるだけだったコナー。

それがいつの間にか自分を追い抜き、前を歩いていると感じたんだと思う。

コナーが眩しくて羨ましかったのだ。

今の自分の状況が悔しくて情けなかったのだ。

コナーはブレンダンからキツく言われた後、言い返さずに1人トイレで涙を流す。

コナーはブレンダンの事を尊敬していたし、愛していた。

だからさっきの言葉を受け止めたのだ。

 

その後、2人は仲直りをする。

特に何かがあった訳ではない。

さり気なく自然に言葉を交わすだけだ。

この心地よい関係に笑みがこぼれた。

最後、コナーがブレンダンを頼ったのが何よりも嬉しかった。

ブレンダンもコナーが船で旅立つ時に喜びを爆発させていた。

 

“全ての兄弟達に捧ぐ”

映画が終わって最初に出てくる一文です。

『シング・ストリート未来へのうた』のまとめ

シング・ストリート 未来へのうた

ジョン・カーニーの集大成です。

2007年『Once ダブリンの街角で』出身地のダブリンから始まる。

2013年『はじまりのうた』でハリウッドに進出。

2015年『シングストリート 未来へのうた』でアイルランドに帰郷。

この順番で観るとジョン・カーニーの変化が分かる。

そして、是非この順番で見て欲しい。

 

『Once ダブリンの街角で』これぞインディー映画!

『はじまりのうた』ハリウッドを意識して派手で豪華。

『シングストリート 未来へのうた』インディーとメジャーの融合。

 

この映画は非常にバランスが良い。

最初の2作品では上手く出来なかった事を消化して、この映画に繋げている。

ジョン・カーニー作品で一番好きな映画だし、売れた映画だ。

 

曲が良い事は言うまでもなく、全ての演奏シーンでニヤニヤしてしまいます。

曲作りのシーンも初々しく、仲間との共同作業は微笑ましい。

シーンに合わせた作詞もピュアすぎて恥ずかしくなるけど、それが良い。

過去の名曲を知っている人はより楽しめる仕掛けも多いです。

 

この映画を若い子が見たらバンドやろうぜって次の日には言うでしょう。

大人が見ると眩しすぎて涙を流します。

U-NEXT/PrimeVideo/Netflixで配信中。

『シング・ストリート 未来へのうた』のスタッフの他の映画。

ジョン・カーニー:『Once ダブリンの街角で』/『はじまりのうた


*本ページの情報は2019年1月時点のものです。
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